魚「なんなのだ!!全く!!」
蟹「ようアフロディーテ。ご機嫌斜めだな」
山羊「どうしたんだ」
魚「またあれだ!!」
山羊「女に間違われたんだな……」
蟹「お前も懲りねえなあ」
魚「なんだその言い方!私が悪いというのか?!」
蟹「そりゃ……わりとそうなんじゃねえか?なあ」
山羊「否定はできんな」
魚「えっ」
蟹「だってよ、お前女っぽい要素が多すぎるぜ。直せるのもあるだろ」
山羊「俺もそう思う」
蟹「この際頑張ってみろよ、な?」
魚「……わかった。憤っていても事態は変わらないからな。で、どこを直せばいい?」
蟹「うーん、まずは名前だな」
魚「な、名前を変えるのか?」
山羊「美と性愛の女神の名を持った人物を男と思うのはほぼ不可能だからな」
蟹「俺だって通り名を使ってるし問題ない」
魚「ふむ、ではアフロと名乗ろう」
山羊「お前そんなんでいいのか?」
蟹「覚えやすいし意味的にはそこが切れ目だから、まあ」
魚「よし一つ潰したぞ。次は何だ」
山羊「やはりバラだな」
魚「でもバラは私の武器だ。これを失ったら戦力が大幅に落ちる」
山羊「そうだろう。捨てろとは言わないさ。使い方を工夫すればいい」
魚「ふむ」
蟹「とりあえずは、その体にこびりついたバラの香気を消すことだな」
山羊「こんな甘ったるい香りは女のものとしか思えんからな」
蟹「男用の整髪料なんかつけたら良いんじゃねえか?」
魚「成る程」
蟹「それと、投げ方も女っぽいな」
山羊「確かに。特にピラニアンローズの投げ方は、なんというか優雅すぎる。デスマスクがあの、足を閉じたまま上半身を捻って腕を高く上げるフォームでものを投げるところを想像してみろ。恐ろしいだろう」
魚「……気持ち悪!」
蟹「おいお前ら俺で遊ぶんじゃねえよ」
山羊「普通の男にあの投げ方は似合わないということだ。次からは野球みたいに投げてみろ」
魚「うん」
蟹「これで3つだな。あとはそうだな、髪型もそうかな」
魚「なぜだ?長髪なら黄金の半分以上がそうではないか」
蟹「お前のはなんか生え方が悪いんだよ。ミロやカミュ、サガは長くてもなよなよしてるとは感じないぜ」
山羊「奴らのは無造作感があるな。アフロディーテはおそらくウェーブがかっているから華やかな印象を与えるのだろう」
魚「そうか。では切ろう」
蟹「色も変えたほうがいい。女児向けアニメのキャラみたいだぞ。集合したときお前だけ明るすぎる」
魚「染めればいいのか」
山羊「だいぶ改造したな」
蟹「名前はアフロで男の整髪料の匂いがして野球フォームでバラを投げる、髪は短髪で暗い色」
山羊「それだけ聞くとバラ以外はしっかり男なのに、目の前のこいつに当てはめるとどうもまだ何か足りないな……」
魚「そうか(しゅん)」
蟹「他にも考えてやるよ。えーと、色が白いところとか」
山羊「さっき出た髪の色と相まって儚そうに見えるな」
魚「日焼けサロンに通えばいいのだな?」
山羊「それと、表情だ」
蟹「ああ。流し目はやめないとな」
魚「流し目?わざとではないのだが」
山羊「癖なのか。尚更質が悪い」
蟹「気合いで直せ」
魚「努力する」
蟹「うーん、まだあるか……?あ、紹介文だ。紹介文」
山羊「天と地の狭間に輝きを誇る美の戦士アフロディーテ。その美しさは88の聖闘士の中でも随一と言われる、というやつだな」
蟹「それだけじゃないぞ。妖艶だの男とは思えぬ容姿や動作だの書いてある」
魚「わかった。担当者を脅してもっと強そうな文章を書かせよう」
蟹山羊(これは言わない方がよかったかもしれん……;)
蟹「ああ、今更だが私服もだな」
山羊「全くだ。胸元にでかいリボンのついたピンクのブラウスに白いパンツ、ヒールのある靴……俺はファッションはよくわかんがレディースか?」
魚「むうう……スーツならいいか?」
蟹「ああまともな服もあるじゃねえか」
山羊「……これで出し尽くした気がする。もうないんじゃないか?」
蟹「待てよ……えーと、喋り方」
魚「何?私は威厳ある喋り方をしているだろう」
蟹「お前の場合威厳だけじゃダメな気がするな。もっと男っぽく」
山羊「一人称が『俺』なら流石に男としか言いようがないんじゃないか」
魚「一人称か。試してみる」
1週間後
短く切り揃えた髪を黒く染め、整髪料の匂いをまとい、さらに肌を焼いたアフロディーテがスーツを着込んで同僚達の前に現れた。
「俺は魚座の黄金聖闘士アフロだ!!」
薔薇を取り出し大きく振りかぶって投げる。
蟹山羊「…………」
魚「どうだ?男らしくなっただろう?」
蟹山羊「…………」
魚「どうかしたのか?」
蟹「し……」
魚「し?」
蟹「死ぬほど似合わねえ!!」
山羊「その顔では何をしても無意味だ!!」
蟹山羊「不気味だからやめてくれ!!!」
魚「な、なにい!?」
一番の問題は顔